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인면수심 에드가/10권: 두 판 사이의 차이

kiseki
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|-|Japanese=<blockquote>'''第10巻  「人でなしのエドガー」'''<br>「ここに、エドガーという青年はいるかい?」       <br /> 予期していなかった名前に、顔が強張る。        <br />「普段はこの食堂にいると教えられて来たのだが」     <br />「彼は、もう……」                   <br /> そう言いかけて、止めた。               <br />「今日は、まだ来てませんよ」              <br />「そうか。ヘンリーくんは?」              <br /> 首を振ると男性は残念がった。魚が描かれた上着が目につく。<br />「どちらかでも顔を見せたら、宿にいると伝えてほしい」  <br /> 承知したことに後悔したが、すでに立ち去った後だった。 <br />                            <br /> その夜。エドガーさんの姿を見ることなく、店は閉まった。<br />この1日が当たり前になる。終わらない夜が続く気分だった。<br />「普通に働いてたんだな」                <br /> 掃除が終わり外へ出ると、ヘンリーさんが立っていた。  <br />「何か用ですか?」                   <br /> ヘンリーさんは黙って、折り畳まれた紙を差し出した。  <br />「中は見てないからな」                 <br /> 帰るのかと思いきや、背中を向けて立ち止まっている。  <br /> 開いた用紙には、文章がたどたどしい字で綴られていた。 <br />                            <br />『初めて、手紙を書きました。              <br /> 言いたいことがまとまらないけれど、許してください。  <br /> 機械には“忘れる”という概念は存在しません。     <br /> 正確に記録する。正確に記録を削除する。それだけ。   <br /> そんな無機質なぼくには、忘れることは決して悪いこと、 <br /> 後悔することばかりじゃないように思えていました。   <br />                            <br /> でも今、これを書いている瞬間は、           <br /> 不思議と“忘れたくない”気持ちが湧いてくるんです。  <br />                            <br /> このぼくを……心臓の鼓動も、流れる血も持たないぼくを <br /> 1体じゃなく、1人として見てくれた君に出会えたから。 <br />                            <br /> ただの傀儡で生を受けた存在に、彩を与えてくれたから。 <br /> ありがとう。                     <br />                            <br /> そんな君を失望させる別れ方になってしまった。     <br /> ごめんなさい。許しを請うには、嘘が大きすぎるね。   <br /> ただどうか、ヘンリーのことは怒らないでほしい。    <br />                            <br /> 最後に、ずっと変わらず胸に抱いてきた、この想いを。  <br /> ――君に幸多かれ。そう祈ろう』            <br />                            <br />「……ッ」                       <br /> 紙をギュッと握りしめて、私は泣き崩れた。       <br /> 声を殺しきれず、夜の街に響き渡ろうが構わなかった。  <br /> 通りかかった人に不審に思われようが、どうでも良かった。<br />「エドガーさん……」                  <br /> 呼び慣れた彼の名前を口にし、立ち上がる。ヘンリーさんは<br />こちらを向いて、苦しそうな表情をしている。       <br />「力を貸してください」                 <br /> 彼は私と視線を合わせた。               <br />「少しだけでいいんです。あなたの立場は分かっています」 <br />                            <br /> ヘンリーさんに案内された扉の前に私は1人で立っている。<br />「俺にできるのはここまでだ」と、連れてきてくれた。   <br /> 別れ際に、夕方にやってきた中年の男性の来客を伝えると、<br />何かを思ったように険しい表情で立ち去って行った。    <br /> けれど、今はもうどうでも良かった。          <br /> 私は深呼吸を1つして、ドアノブを引いた。       <br />「!? なんだ、おまえは」               <br /> 白衣の研究者たちが、一斉に振り返る。彼らが見つめていた<br />先には、台に横になるエドガーさん。           <br />「どうやって入ってきた! 立ち入り禁止だぞ!」     <br /> 怒声に怯まず、前へと進み出る。            <br />「エドガーさんを返してください」            <br /> 数人が目を合わせ、せせら笑う。            <br />「君か。研究所に乗りこんできた少女というのは」     <br />「すでにエドガーのデータは回収し、分析中だよ」     <br />「残念ながら、君が出会ったエドガー青年はもう存在しない」<br />「……彼が抱いていた気持ちに、目を向けてください」   <br /> 声が震えているのが情けなかった。           <br />「人工知能は人間とは違う。技術の集大成であり、道具だ」 <br />「……科学は、道具を生み出すだけがすべてですか」    <br />「なんだと?」                     <br />「彼が身につけたものを、もっとよく知ってください。   <br /> 彼が行動し、発した言葉から生まれた絆を見てください。 <br /> 彼によって繋げられた人の輪を無視しないでください」  <br />「わたしからもお願いしたい」              <br /> 突然部屋に入ってきたのは、夕方に出会ったあの男性。  <br />「わたしも彼との話が終わってない。伝えるべき礼もある」 <br />「い、一般人がぞろぞろと。警備員は何をしてる!」    <br />「ともかく、たかが感傷的な理由で研究成果は手放さないぞ」<br />「そうだ、この結論は変わらない」            <br />「感情論がダメなら、ちゃんと手続きを踏めばいいのかい?」<br /> 男性の話を聞きながら、私は廊下からの足音を耳にした。 <br />「釣公師団から、正式に遊撃士協会へ依頼をさせてもらった。<br /> エドガー氏の身柄の返還をな」             <br /> 男性の言葉に、研究員たちの顔色が変わる。       <br />「ふぅ。エドガーのために、どうにか間に合ったみたいだな」<br />「ええ。こんなに早く渓谷での恩を返せる時が来るなんてね」<br /> 現れたのは、ボリスさんとベラさんの2人だった。    <br />「エドガーくんがどれだけ慕われているかも、       <br /> これで分かってもらえるんじゃないかな?」       <br />「どうかお願いします。エドガーさんを返してください」  <br /> こちら側の増援に、研究員たちはたじろぎ始めた。    <br />「し、しかし。君たちはリスクを考えていない。      <br /> 人工知能に自我が発達したら、管理下に置けなくなるんだ」<br />「そうだ。万が一、我々の下から離れることがあれば、   <br /> どこで何を起こすか分からない。悪用される可能性もある」<br />「それはッ……」                    <br /> この状況でも研究員たちは断固として譲る気配は無く、私た<br />ちは口を閉じるしかなかった。              <br />「じゃあ、1つ提案をさせてもらいたい」         <br /> 背後の声。振り返った先にいたのは、ヘンリーさんだった。<br /> 長い眠りから覚めて、思考も意識も動きが悪い。宿舎の天井<br />をしばらく見つめた後、ベッドの傍へ視線を移す。     <br /> こちらに微笑むクレムがいた。             <br /> ぼくは後に事情を知った。みんなの働きのおかげで、人格が<br />戻されたこと。この町を離れない条件で、生活する権利が与え<br />られたこと。……その条件をクレムも望み、彼女をこの町に縛<br />りつける結果になってしまったこと。           <br />                            <br /> 騒動の翌朝。                     <br /> ずっと聞きたいと願っていた彼女の言葉を、ぼくは忘れない。<br />「おはよう」                      <br />                         《完》</blockquote></tabber>
|-|Japanese=<blockquote>'''第10巻  「人でなしのエドガー」'''<br>「ここに、エドガーという青年はいるかい?」       <br /> 予期していなかった名前に、顔が強張る。        <br />「普段はこの食堂にいると教えられて来たのだが」     <br />「彼は、もう……」                   <br /> そう言いかけて、止めた。               <br />「今日は、まだ来てませんよ」              <br />「そうか。ヘンリーくんは?」              <br /> 首を振ると男性は残念がった。魚が描かれた上着が目につく。<br />「どちらかでも顔を見せたら、宿にいると伝えてほしい」  <br /> 承知したことに後悔したが、すでに立ち去った後だった。 <br />                            <br /> その夜。エドガーさんの姿を見ることなく、店は閉まった。<br />この1日が当たり前になる。終わらない夜が続く気分だった。<br />「普通に働いてたんだな」                <br /> 掃除が終わり外へ出ると、ヘンリーさんが立っていた。  <br />「何か用ですか?」                   <br /> ヘンリーさんは黙って、折り畳まれた紙を差し出した。  <br />「中は見てないからな」                 <br /> 帰るのかと思いきや、背中を向けて立ち止まっている。  <br /> 開いた用紙には、文章がたどたどしい字で綴られていた。 <br />                            <br />『初めて、手紙を書きました。              <br /> 言いたいことがまとまらないけれど、許してください。  <br /> 機械には“忘れる”という概念は存在しません。     <br /> 正確に記録する。正確に記録を削除する。それだけ。   <br /> そんな無機質なぼくには、忘れることは決して悪いこと、 <br /> 後悔することばかりじゃないように思えていました。   <br />                            <br /> でも今、これを書いている瞬間は、           <br /> 不思議と“忘れたくない”気持ちが湧いてくるんです。  <br />                            <br /> このぼくを……心臓の鼓動も、流れる血も持たないぼくを <br /> 1体じゃなく、1人として見てくれた君に出会えたから。 <br />                            <br /> ただの傀儡で生を受けた存在に、彩を与えてくれたから。 <br /> ありがとう。                     <br />                            <br /> そんな君を失望させる別れ方になってしまった。     <br /> ごめんなさい。許しを請うには、嘘が大きすぎるね。   <br /> ただどうか、ヘンリーのことは怒らないでほしい。    <br />                            <br /> 最後に、ずっと変わらず胸に抱いてきた、この想いを。  <br /> ――君に幸多かれ。そう祈ろう』            <br />                            <br />「……ッ」                       <br /> 紙をギュッと握りしめて、私は泣き崩れた。       <br /> 声を殺しきれず、夜の街に響き渡ろうが構わなかった。  <br /> 通りかかった人に不審に思われようが、どうでも良かった。<br />「エドガーさん……」                  <br /> 呼び慣れた彼の名前を口にし、立ち上がる。ヘンリーさんは<br />こちらを向いて、苦しそうな表情をしている。       <br />「力を貸してください」                 <br /> 彼は私と視線を合わせた。               <br />「少しだけでいいんです。あなたの立場は分かっています」 <br />                            <br /> ヘンリーさんに案内された扉の前に私は1人で立っている。<br />「俺にできるのはここまでだ」と、連れてきてくれた。   <br /> 別れ際に、夕方にやってきた中年の男性の来客を伝えると、<br />何かを思ったように険しい表情で立ち去って行った。    <br /> けれど、今はもうどうでも良かった。          <br /> 私は深呼吸を1つして、ドアノブを引いた。       <br />「!? なんだ、おまえは」               <br /> 白衣の研究者たちが、一斉に振り返る。彼らが見つめていた<br />先には、台に横になるエドガーさん。           <br />「どうやって入ってきた! 立ち入り禁止だぞ!」     <br /> 怒声に怯まず、前へと進み出る。            <br />「エドガーさんを返してください」            <br /> 数人が目を合わせ、せせら笑う。            <br />「君か。研究所に乗りこんできた少女というのは」     <br />「すでにエドガーのデータは回収し、分析中だよ」     <br />「残念ながら、君が出会ったエドガー青年はもう存在しない」<br />「……彼が抱いていた気持ちに、目を向けてください」   <br /> 声が震えているのが情けなかった。           <br />「人工知能は人間とは違う。技術の集大成であり、道具だ」 <br />「……科学は、道具を生み出すだけがすべてですか」    <br />「なんだと?」                     <br />「彼が身につけたものを、もっとよく知ってください。   <br /> 彼が行動し、発した言葉から生まれた絆を見てください。 <br /> 彼によって繋げられた人の輪を無視しないでください」  <br />「わたしからもお願いしたい」              <br /> 突然部屋に入ってきたのは、夕方に出会ったあの男性。  <br />「わたしも彼との話が終わってない。伝えるべき礼もある」 <br />「い、一般人がぞろぞろと。警備員は何をしてる!」    <br />「ともかく、たかが感傷的な理由で研究成果は手放さないぞ」<br />「そうだ、この結論は変わらない」            <br />「感情論がダメなら、ちゃんと手続きを踏めばいいのかい?」<br /> 男性の話を聞きながら、私は廊下からの足音を耳にした。 <br />「釣公師団から、正式に遊撃士協会へ依頼をさせてもらった。<br /> エドガー氏の身柄の返還をな」             <br /> 男性の言葉に、研究員たちの顔色が変わる。       <br />「ふぅ。エドガーのために、どうにか間に合ったみたいだな」<br />「ええ。こんなに早く渓谷での恩を返せる時が来るなんてね」<br /> 現れたのは、ボリスさんとベラさんの2人だった。    <br />「エドガーくんがどれだけ慕われているかも、       <br /> これで分かってもらえるんじゃないかな?」       <br />「どうかお願いします。エドガーさんを返してください」  <br /> こちら側の増援に、研究員たちはたじろぎ始めた。    <br />「し、しかし。君たちはリスクを考えていない。      <br /> 人工知能に自我が発達したら、管理下に置けなくなるんだ」<br />「そうだ。万が一、我々の下から離れることがあれば、   <br /> どこで何を起こすか分からない。悪用される可能性もある」<br />「それはッ……」                    <br /> この状況でも研究員たちは断固として譲る気配は無く、私た<br />ちは口を閉じるしかなかった。              <br />「じゃあ、1つ提案をさせてもらいたい」         <br /> 背後の声。振り返った先にいたのは、ヘンリーさんだった。<br /> 長い眠りから覚めて、思考も意識も動きが悪い。宿舎の天井<br />をしばらく見つめた後、ベッドの傍へ視線を移す。     <br /> こちらに微笑むクレムがいた。             <br /> ぼくは後に事情を知った。みんなの働きのおかげで、人格が<br />戻されたこと。この町を離れない条件で、生活する権利が与え<br />られたこと。……その条件をクレムも望み、彼女をこの町に縛<br />りつける結果になってしまったこと。           <br />                            <br /> 騒動の翌朝。                     <br /> ずっと聞きたいと願っていた彼女の言葉を、ぼくは忘れない。<br />「おはよう」                      <br />                         《完》</blockquote></tabber>
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[[Category:Trails of Cold Steel III Books]]
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2024년 4월 1일 (월) 12:51 기준 최신판

제10권 「사람이 아닌 에드가」

「이곳에 에드가란 청년이 있습니까?」

갑작스런 그 이름에 얼굴이 굳어졌다.

「평소에는 이 식당에 있다고 해서 왔는데」

「그는 이제……」

라고 하다 말을 멈췄다.

「오늘은 아직 안 왔어요」

「그렇군요. 헨리 군은?」

없다고 하자 아쉬워 했다. 옷의 물고기가 인상적이다.

「혹시 오면 근처 여관에 묵고 있다고 전해주겠습니까?」

그는 이 말을 하고 실망한 듯이 바로 돌아갔다.


그 날 밤, 에드가 씨는 오지 않았다. 이제 이런 하루가 당연한 일이 되겠지. 끝나지 않는 밤이 이어지는 느낌이다.

「평소처럼 일을 하더군」

청소가 끝나 밖에 나오니 헨리 씨가 서있었다.

「무슨 일로 오셨나요?」

헨리 씨는 입을 다물고 접힌 종이를 내밀었다.

「안은 보지 않았어」

돌아가나 싶었는데 등을 돌리고 서있기만 했다. 그것은 비틀거리는 글자들로 채워진 편지였다.

『처음이네요, 편지를 쓰는 건.

하고 싶은 말이 많은데 정리가 안 된 거 이해해줘요.

기계에는 “잊는다”란 개념이 존재하지 않습니다.

정확하게는 기록한다. 기록을 삭제한다. 그것뿐이죠.

그런 무감각한 제게는 잊는다는 것이 결코 나쁘거나

후회할 일이 아니라는 생각이 들었습니다.

하지만 지금 이것을 쓰고 있는 이 순간에는

이상하리만큼 “잊고 싶지 않다”란 기분이 듭니다.

이런 저를……심장의 고동도 흐르는 피도 갖지 않은 저를

1대가 아닌 1명으로 봐줬던 당신과 만날 수 있었으니까요.


평범한 꼭두각시로 태어난 존재에게 빛을 줘서……

고마워요.


그런 당신을 실망시키는 이별이 되어 버렸네요. 미안해요.

용서를 비는 것에는 너무 큰 거짓이 필요하군요.

아, 헨리에게는 너무 화내지 않았으면 좋겠어요.


마지막으로 언제나 변함없이 가슴에 품어온 이 마음을.

――당신이 항상 행복하기를. 간절히 빌게요』

「……!」

편지를 꽉 쥐고 나는 오열했다.

목소리를 죽이지 못해 밤거리를 가득 울려도 상관없었다.

지나가는 사람들이 어떻게 생각하든, 아무래도 좋았다.

「에드가 씨……」

부르는 게 익숙해진 그의 이름을 입에 담고, 일어섰다. 헨리 씨는 내쪽을 향한 채, 괴로운 표정을 하고 있었다.

「힘을 빌려주세요」

그는 나와 시선을 맞췄다.

「잠깐이라도 괜찮아요. 당신의 입장은 알고 있어요」


헨리 씨의 안내로, 나는 문 앞에 혼자 서있다.

「내가 할 수 있는 건 여기까지야」라며 데려다 주었다.

헤어질 때, 저녁에 찾아왔던 남자 손님에 대해 전했다. 그는 잠깐 뭔가를 생각하더니 황급히 어디론가로 달려갔다.

하지만 지금은 모든 게 어찌 되든 상관없다.

나는 심호흡을 하고 문고리를 당겼다.

「!? 뭐야, 넌?」

흰 가운의 연구자들이 일제히 뒤를 돌았다. 그들이 바라보던 곳에는 작업대에 누워있는 에드가 씨가 있었다.

「어떻게 들어온 거야! 여긴 출입금지라고!」

고성에도 굴하지 않고 앞으로 나아갔다.

「에드가 씨를 돌려주세요」

몇몇이 눈을 맞추더니, 코웃음을 쳤다.

「자네였군. 연구소에 쳐들어왔다던 소녀가」

「이미 에드가의 데이터는 회수해서 분석 중이다」

「안타깝지만 네가 만났던 에드가란 청년은 더 이상 없어」

「……그가 품었던 감정에 눈을 돌려주세요」

나의 떨리는 목소리가 왠지 한심했다.

「인공지능은 인간과는 달라. 기술의 집대성이자 도구라고」

「……과학은 도구를 만들어내면 그것으로 끝인가요?」

「뭐라고?」

「그가 체득한 것을 더 잘 파악하셔야죠. 그가 행동하고 말했던 것들로 생겨난 인연을 보라고요. 그로 인해 이어진 사람들의 고리를 존중하셔야 해요」

「나 역시도 부탁을 하고 싶네」

갑자기 방에 들어온 것은 저녁에 만났던 남성이었다.

「그와 할 이야기가 남아 있어. 전해야 할 고마움도 있고」

「이, 일반인이 또! 대체 경비는 뭘 하고 있는 거야!」

「그런 감상적인 이유만으로 연구성과를 포기할 순 없어」

「맞아, 이 결론은 바뀌지 않아」

「감정론이 안 된다면, 제대로 절차를 밟으면 되는 건가?」

남성의 말이 끝나자 복도 쪽에서 발소리가 들려왔다.

「조공사단에서 정식으로 유격사 협회에 의뢰를 했다. 에드가 씨의 신병을 환원해 달라고」

남성의 말에 연구원들의 얼굴색이 바뀌었다.

「후우, 늦지 않게 온 것 같군. 에드가를 위해서 말야」

「이렇게나 빨리 계곡에서의 빚을 갚게 될 줄은」

나타난 것은 보리스 씨와 벨라 씨였다.

「에드가 군을 그리워하는 사람이 얼마나 많은지 이정도면 충분히 알았겠지?」

「부탁합니다. 에드가 씨를 제발 돌려주세요」

우리쪽 사람이 늘어나자, 연구원들은 위축되기 시작했다.

「하, 하지만. 당신들은 위험성을 생각하고 있지 않아. 인공지능에게 자아가 생기면 관리를 할 수 없게 된다고」

「그래. 만약 우리로부터 멀어지면 어디서 무슨 짓을 할지 알 수 없다고. 악용될 가능성도 있어」

「그건……」

이런 상황에서도 연구원들은 결코 물러서려 하지 않았고 우리는 그저 입을 다물 수밖에 없었다.

「자, 그럼 하나의 제안을 하지」

등 뒤의 목소리. 뒤를 돌아보니 헨리 씨였다.

긴 잠에서 깨어나 사고도 의식도 움직임도 별로다. 숙소의 천장을 잠시 멍하니 바라본 후, 침대 옆으로 시선을 돌렸다.

그곳에는 미소 짓는 클렘이 있었다.

나중에 경위를 들었다. 모두가 움직여준 덕에 인격이 돌아오게 되었고, 이 마을을 벗어나지 않는 조건으로 생활할 권리를 얻었다고. 다만……그 조건을 클렘도 원하여 그녀 역시 이 마을에 묶여 버리는 결과로 이어졌다.


소동의 다음 날 아침.

언제나 듣고 싶었던 그녀의 그 말을 나는 잊을 수가 없다.

「좋은 아침~」


《끝》

Finale - Heartless Edgar

'Is a young man named Edgar here?' the man asked me.

Hearing the name brought a sudden sharp pain to my chest.

'He told me I could usually find him at this restaurant,' he continued.

'He, um...' I started to tell him, but I stopped myself. 'He isn't here today.'

'Oh, that's a shame,' he said. 'How about Henry?'

I shook my head. He let out a disappointed sigh.

'Well, if you see either of them, could you let them know I'll be at the inn?' As he turned to leave, I noticed his jacket had an emblem with a fish on it.

I promised him I would, but after he left, I regretted not telling him Edgar wouldn't be coming back.

That night, I closed the restaurant without seeing Edgar. When it occurred to me that every night would be like this from now on, I felt an emptiness inside of me.

'Closing for the day, huh?' I heard a voice as I locked the front door and turned to go home.

It was Henry.

'What do you want?' I couldn't figure out if seeing him made me more sad or angry.

He didn't say anything. He just handed me a folded slip of paper.

'I didn't read it,' he said, quietly. I expected him to leave, but he just turned his back to me and stood there.

I opened up the paper. It was covered in shaky writing:

'This is the first letter I've ever written. I can't seem to organize my thoughts, so please forgive me.

Machines don't know how to forget. We can faithfully record data or faithfully delete it. That's all. I thought that for someone like me, forgetting would be as easy and simple as deleting a file. Not something to regret or mourn.

But as I write this now, I'm filled with a strange feeling. Like I don't want to forget.

It's because I met you. You, who accepted me, despite the fact that I have no blood in my veins and no heart in my chest. You saw me, not as a machine, but as a person.

You brought love and beauty into the life of this simple puppet.

Thank you.

I'm sure it must be disappointing for us to part like this. I'm sorry for that. The lie I lived is too big to beg your forgiveness for. I only ask that you don't be angry with Henry.

Finally, I want to express the feeling I've been holding in my heart since I first met you: May you find all the happiness in the world. That is my true prayer for you.'

I fell to my knees, crying, gripping the letter in my hands. I couldn't stop my tears, and I didn't care if my sobbing echoed through the dark streets. I didn't care if anyone saw me or what they thought.

'Edgar...' I forced the name out through my sobs.

Hearing me, Henry turned around. His eyes were puffy and he had a pained expression.

'Please.' I looked up at him. 'Help me.'

He met my gaze.

'I...' he hesitated, 'I understand.'

I stood alone in front of the door Henry had brought me to. Once we had gotten there, he told me it was as far as he could take me. As he turned to leave, I told him about the man who had come to visit the restaurant.

Henry's expression grew serious, but he said nothing and continued walking.

But none of that mattered now. I took a deep breath and stepped through the door.

'Who are you?' The room was filled with researchers in white lab coats. They were huddled around a workbench.

Lying on top of the workbench was Edgar.

'How did you get in here?' shouted one of the researchers. 'This is a restricted area!'

Undeterred, I walked forward.

'Give me Edgar,' I told them.

Several of them looked at each other and chuckled.

'Oh, you're that girl who was here the other day,' said one.

'Know that all of Edgar's data has already been extracted for analysis,' said another. 'The Edgar you knew doesn't exist anymore.'

'His feelings were real,' I said, my voice cracking.

'No,' said a researcher, 'that's not possible, because artificial intelligences are not human. They're simply tools. Compilations of technology and techniques.'

'Are tools the only things you care about?' I asked. 'The only things you can see?'

'What are you talking about?' said the researcher.

'Did you even try to see the bonds he created?' I pointed to Edgar. 'The circle of people he brought together?'

'I feel the same way,' said a voice from behind me.

The man who had visited the restaurant earlier entered the room.

'He and I still have things to discuss,' he said, 'I need to thank him for helping me.'

'Another civilian?!' exclaimed one of the researchers. 'What is security doing?!'

'It doesn't matter what you say,' said another. 'We're not going to stop our research for such sentimental reasons.'

'That's right,' chimed in yet another one. 'You can't change our decision.'

'Well, if sentimental arguments won't work, we'll just have to go through more official channels, won't we?'

A deep voice reverberated through the room as a pair of footsteps approached from the hallway.

'The Bracer Guild has received an official request from the Fisherman's Guild for the return of Edgar.' The man held out his bracer badge.

'It seems we made it just in time.' The woman with him let out a sigh of relief.

'Yeah. Didn't think we'd be helping him out again so soon.'

It was Boris and Bella.

Upon hearing Boris' words, the researchers' expressions changed.

'Now do you see just how many people care about Edgar?'

I stepped forward. 'I'm begging you. Please give him back to us.'

Looking at our reinforcements, they started to shrink back.

'But, think of the risks,' one stammered. 'If an artificial intelligence develops its own will, it can no longer be controlled.'

'Yes,' said another, 'if we can't control him, there's no telling what he might do. Someone else may even take him and use him for malicious purposes.'

'But...' I started.

Even in the face of all our support, they still refused to return him to us. We refused to give up, too, however.

In the middle of our standoff, a familiar voice broke the silence.

'Then let me make a suggestion.'

After what felt like a long time, I slowly opened my bleary eyes. My mind felt hazy and my body was sluggish. I lay there, staring at the ceiling of my dorm room for a bit, before turning to the side. There, I saw Clementine sitting next to my bed. Her eyes were full of tears, but she was smiling more brightly than I'd ever seen her.

I found out what happened later. Thanks to everyone, my personality was re-uploaded back into my body. I was allowed to keep living as Edgar, so long as I didn't leave town. Clementine had agreed to stay with me and would be confined to the town, as well.

She said that didn't matter, however, as long as we could be together.

But the morning after all that...

I'll never forget the words you said to me. The ones I'd always wanted to hear you say:

'Good morning, Edgar.'

THE END

第10巻  「人でなしのエドガー」
「ここに、エドガーという青年はいるかい?」       
 予期していなかった名前に、顔が強張る。        
「普段はこの食堂にいると教えられて来たのだが」     
「彼は、もう……」                   
 そう言いかけて、止めた。               
「今日は、まだ来てませんよ」              
「そうか。ヘンリーくんは?」              
 首を振ると男性は残念がった。魚が描かれた上着が目につく。
「どちらかでも顔を見せたら、宿にいると伝えてほしい」  
 承知したことに後悔したが、すでに立ち去った後だった。 
                            
 その夜。エドガーさんの姿を見ることなく、店は閉まった。
この1日が当たり前になる。終わらない夜が続く気分だった。
「普通に働いてたんだな」                
 掃除が終わり外へ出ると、ヘンリーさんが立っていた。  
「何か用ですか?」                   
 ヘンリーさんは黙って、折り畳まれた紙を差し出した。  
「中は見てないからな」                 
 帰るのかと思いきや、背中を向けて立ち止まっている。  
 開いた用紙には、文章がたどたどしい字で綴られていた。 
                            
『初めて、手紙を書きました。              
 言いたいことがまとまらないけれど、許してください。  
 機械には“忘れる”という概念は存在しません。     
 正確に記録する。正確に記録を削除する。それだけ。   
 そんな無機質なぼくには、忘れることは決して悪いこと、 
 後悔することばかりじゃないように思えていました。   
                            
 でも今、これを書いている瞬間は、           
 不思議と“忘れたくない”気持ちが湧いてくるんです。  
                            
 このぼくを……心臓の鼓動も、流れる血も持たないぼくを 
 1体じゃなく、1人として見てくれた君に出会えたから。 
                            
 ただの傀儡で生を受けた存在に、彩を与えてくれたから。 
 ありがとう。                     
                            
 そんな君を失望させる別れ方になってしまった。     
 ごめんなさい。許しを請うには、嘘が大きすぎるね。   
 ただどうか、ヘンリーのことは怒らないでほしい。    
                            
 最後に、ずっと変わらず胸に抱いてきた、この想いを。  
 ――君に幸多かれ。そう祈ろう』            
                            
「……ッ」                       
 紙をギュッと握りしめて、私は泣き崩れた。       
 声を殺しきれず、夜の街に響き渡ろうが構わなかった。  
 通りかかった人に不審に思われようが、どうでも良かった。
「エドガーさん……」                  
 呼び慣れた彼の名前を口にし、立ち上がる。ヘンリーさんは
こちらを向いて、苦しそうな表情をしている。       
「力を貸してください」                 
 彼は私と視線を合わせた。               
「少しだけでいいんです。あなたの立場は分かっています」 
                            
 ヘンリーさんに案内された扉の前に私は1人で立っている。
「俺にできるのはここまでだ」と、連れてきてくれた。   
 別れ際に、夕方にやってきた中年の男性の来客を伝えると、
何かを思ったように険しい表情で立ち去って行った。    
 けれど、今はもうどうでも良かった。          
 私は深呼吸を1つして、ドアノブを引いた。       
「!? なんだ、おまえは」               
 白衣の研究者たちが、一斉に振り返る。彼らが見つめていた
先には、台に横になるエドガーさん。           
「どうやって入ってきた! 立ち入り禁止だぞ!」     
 怒声に怯まず、前へと進み出る。            
「エドガーさんを返してください」            
 数人が目を合わせ、せせら笑う。            
「君か。研究所に乗りこんできた少女というのは」     
「すでにエドガーのデータは回収し、分析中だよ」     
「残念ながら、君が出会ったエドガー青年はもう存在しない」
「……彼が抱いていた気持ちに、目を向けてください」   
 声が震えているのが情けなかった。           
「人工知能は人間とは違う。技術の集大成であり、道具だ」 
「……科学は、道具を生み出すだけがすべてですか」    
「なんだと?」                     
「彼が身につけたものを、もっとよく知ってください。   
 彼が行動し、発した言葉から生まれた絆を見てください。 
 彼によって繋げられた人の輪を無視しないでください」  
「わたしからもお願いしたい」              
 突然部屋に入ってきたのは、夕方に出会ったあの男性。  
「わたしも彼との話が終わってない。伝えるべき礼もある」 
「い、一般人がぞろぞろと。警備員は何をしてる!」    
「ともかく、たかが感傷的な理由で研究成果は手放さないぞ」
「そうだ、この結論は変わらない」            
「感情論がダメなら、ちゃんと手続きを踏めばいいのかい?」
 男性の話を聞きながら、私は廊下からの足音を耳にした。 
「釣公師団から、正式に遊撃士協会へ依頼をさせてもらった。
 エドガー氏の身柄の返還をな」             
 男性の言葉に、研究員たちの顔色が変わる。       
「ふぅ。エドガーのために、どうにか間に合ったみたいだな」
「ええ。こんなに早く渓谷での恩を返せる時が来るなんてね」
 現れたのは、ボリスさんとベラさんの2人だった。    
「エドガーくんがどれだけ慕われているかも、       
 これで分かってもらえるんじゃないかな?」       
「どうかお願いします。エドガーさんを返してください」  
 こちら側の増援に、研究員たちはたじろぎ始めた。    
「し、しかし。君たちはリスクを考えていない。      
 人工知能に自我が発達したら、管理下に置けなくなるんだ」
「そうだ。万が一、我々の下から離れることがあれば、   
 どこで何を起こすか分からない。悪用される可能性もある」
「それはッ……」                    
 この状況でも研究員たちは断固として譲る気配は無く、私た
ちは口を閉じるしかなかった。              
「じゃあ、1つ提案をさせてもらいたい」         
 背後の声。振り返った先にいたのは、ヘンリーさんだった。
 長い眠りから覚めて、思考も意識も動きが悪い。宿舎の天井
をしばらく見つめた後、ベッドの傍へ視線を移す。     
 こちらに微笑むクレムがいた。             
 ぼくは後に事情を知った。みんなの働きのおかげで、人格が
戻されたこと。この町を離れない条件で、生活する権利が与え
られたこと。……その条件をクレムも望み、彼女をこの町に縛
りつける結果になってしまったこと。           
                            
 騒動の翌朝。                     
 ずっと聞きたいと願っていた彼女の言葉を、ぼくは忘れない。
「おはよう」                      
                         《完》